「ケガの予防はセルフチェック、セルフケアが基本。 知識を持っておくことも大事です」 松田丈志さん(元競泳選手・スポーツジャーナリスト)

#スポーツ障害

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競泳日本代表選手としてオリンピックに4大会連続出場し、4個のメダルを獲得した松田丈志さん。現役時代に大きなケガに悩まされることなく泳ぎ続けられたのは、子供の頃から習慣になっていた身体のケアのおかげと語ります。今も様々なスポーツに挑戦を続ける松田さんに、ケガをすることなく長くスポーツを続けるために必要なことをお話しいただきました。

――松田さんは現役時代、あまり大きなケガや故障をしていないイメージがありますが、身体のケアには相当気を遣っていたのでしょうか?

松田 僕のコーチだった久世由美子先生(※)から、とにかく故障しない身体作りが大事なんだということを子供の頃からずっと教えられてきました。メイン練習よりも(水中での)ウォーミングアップ、その前の準備体操や、柔軟体操、補強運動も小学生時代からしっかりやっていました。練習メニューが終わった後のクールダウンにも時間をすごくかけて、クールダウンが終わったら、必ずストレッチをして帰るということをルーティーンとして教えられました。おかげでセルフケアすることが当たり前になって、自分の身体と向き合う習慣がついたのだと思います。

――トップスイマーとして活躍するようになってからも、その習慣が続いていたわけですね。

松田 水泳選手には突発的なケガやパフォーマンスが落ちる「2大要因」があって、それは足の捻挫と腰痛なんです。捻挫はプールサイドを裸足で動きまわることで起きやすいので、気をつけて歩くしかないんですけど、腰痛は予備軍の人がたくさんいて、事前に分かれば対策がとれる。競泳の日本代表選手は全員MRIの検査を受けるんですが、その結果を見ると私も予備軍でした。ドクターから、「松田さんも腰痛予備軍だから、重いものを持つ時は腹圧を高めた状態で行ってください」などアドバイスしてくれて、とても良い取り組みだなと思っています。自分の意識もさらに高まって、大きなケガをせずに済みました。
現在も趣味でトライアスロンに参加しているので、肩を痛めないようにセラバンドを使ったインナーマッスルのトレーニングをしたり、膝の痛みはねじれが原因なので、ねじれないようにストレッチしたり、内転筋や臀筋を効かせた補強的なエクササイズをしています。やはり基本はストレッチだと思います。

――今でもストレッチには時間をかけているのですか?

松田 なるべくそうしたいんですが、仕事の合間など空いてる時間にラン、バイク、スイムの練習をするとなると、なかなかストレッチにまで時間をかけることができません。なので、すき間時間にストレッチをしています。例えば家で子供がご飯を食べ終わるのを待っている間とか、子供を公園に連れて行って遊ばせている時間とか、仕事で楽屋に入ったときとか。ストレッチはどこでもできるので、普段からこまめにやっておくようにしています。夜寝る前とか、朝ベッドから起きたときに少しでもやっておくと全然違いますね。
今はセルフケアグッズもたくさんあるので、私もひと通り揃えています。新聞を読みながら青竹踏みをしたり、ゴルフボールで足裏をマッサージしたり。

――そうした日頃のケアの積み重ねが丈夫な身体を作るのですね。松田さんは身体の痛みにも敏感なのですか?

松田 現役時代から気を遣っていましたので、体の歪みや痛みなど、異変にはすごく敏感な方だと思います。痛みのシグナルが出たら、早め早めに対処することが大事ですね。治療に時間を要する痛みになってしまうと、練習ができなくなるので。
ケガについての知識も大事だと思います。痛みの原因がわかれば対処法が見えてくるので。痛みが出ている部位とは違う箇所に本当の原因が隠れていたりすることもよくあります。痛みや異変を感じたとき、スポーツ障害について詳しく解説しているサイトなどをチェックしてみることをお勧めします。また、ケガ予防やリハビリのエクササイズって地味なんですけど、練習量が多い人がやると、身体の動きが良くなったことが実感できると思います。

――ケガすることなくスポーツを続けたい人にメッセージをお願いします。

松田 ケガをしてから治療院に駆け込む人が多いのですが、長くスポーツを楽しむためにはケガをしないことが一番。そのためにはセルフチェック、セルフケアが基本で、それでも治まらないときに治療院や病院を頼るものだと考えてください。いざと言うときの「駆け込み寺」は持っておいた方が良いでしょう。私もトレイルランやトライアスロン、ロードバイクなど、水泳とは違うスポーツに取り組んでいますが、身体のケアに関して大きな違いはなく、共通したものだと感じています。今は健康的にいつまでも運動を楽しめる身体でありたいという気持ちが以前より強くなりました。

※久世由美子先生…松田丈志さんが4歳の頃からコーチを務め、オリンピック4大会連続出場と4つのメダル獲得に貢献した。


 
プロフィール 松田丈志さん
宮崎県延岡市出身。地元・東海(とうみ)スイミングクラブで4歳から水泳を始める。久世由美子コーチ指導のもと頭角を現し、アテネ五輪出場の座をつかむ。2008年北京五輪では200mバタフライで銅メダルを獲得。2012年ロンドン五輪では200mバタフライで銅メダルを獲得し、400mメドレーリレーで日本競泳史上初となる銀メダルを獲得した。4度目のオリンピック出場となった2016年リオデジャネイロ五輪では800mフリーリレーに出場し、同種目では52年ぶりとなる銅メダルを獲得。現役を引退してからも、トレイルラン、トライアスロンなどの挑戦を続けている。

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